審査付き論文の概要
商品情報伝達形式からみた商業地の街並の景観特性
福井 恒明, 篠原 修, 平野 勝也
商業地の魅力を考える際,その雰囲気を形成する要因の究明と,それに基づく分析が不可欠である。本論文は、商業地の街並み景観の特性が、商店主から消費者への情報伝達に基づくと捉え、その形式の差異から商業地の街並み景観を分析を試みたものである。情報伝達の観点から各店舗を捉える枠組みを設定し、その枠組みに従い実例調査を行い、情報伝達形式から店舗をタイプ分けし、それらの集合として、街並み景観を類型化した。
その結果、飲食・物販系6業種には12のタイプの店舗が存在し、商業地の街並み景観は4系統に類型化できた。これにより、従来の業種構成論による分類では明らかにできなかった街並み景観の差異と同一性を明らかにした。
音声情報の役割に着目した商業地街路の性格分析
新屋 千樹,篠原 修,斎藤 潮,平野 勝也
商業地街路の性格は,音声をも含めた店舗の情報発信により規定されると考えられる.本論文は街路の性格形成における音声情報,視覚情報それぞれの役割及びその相互関連を明らかにすることを目的とし,まず、視覚情報,音声情報を情報論的に分類し,それぞれ情報量を定性的に定義した.これに則り実態調査及びSD法心理実験を行い,情報特性と街路の性格認識との関連を分析した結果,街路の性格形成において音声情報,視覚情報は同列に議論でき,加工性の低い情報は街路の親近感を高める働きをし、加工性の高い情報は、猥雑さを演出する性質を持つことを明らかにした.さらにこれに基づき、情報発信形式に応じた商業地街路の6類型を抽出した。
情報伝達形態から見た店舗イメージ分析手法
平野 勝也,高梨 充,高森 秀司
本研究は,情報伝達形態の観点から店舗イメージの定量的分析手法を提案するものである。この観点の依拠する論理,仮説を整理し,記号論に則り記号を屋号,店外直感記号,店内直感記号,店外論理記号に分類し,各々の一階間口面積に対する該当記号の面積比として情報特性を求めるというイメージ計量手法を提案した。これを実際の店舗に適用し,情報特性による店舗分類を行った上で、類似性心理実験の結果と照合し,その妥当性を確認した。また,店外論理記号猥雑さを演出し,店外直感記号がそれを補完している点,店外直感記号及び店内直感記号の多さが親近感を演出している点,論理記号の多さが疎外感を演出していること等が明らかとなった.
街路イメージの認知構造分析
平野勝也,齋藤淳
本研究では街路イメージの認知構造を2つの瞬間視実験により明らかにすることを目的とする.認知構造とは,時間増大に伴う街路イメージの深化,イメージ形成要因の変化を意味する.この研究の成果を以下に要約する.街路イメージには4つの層が存在し,それらは「街路に対する心理的距離」「街路の品格」「街路ボリューム」「街路の流行度」の4つである.各イメージ層の想起・決定の時間と順序が構造化された.
街路イメージ類型を用いた繁華街構成分析
平野 勝也,資延 宏紀
繁華街の魅力の重要な要素である「多様性」「奥行き」を創造するためには,「人の感覚」を基準とした街路類型が必要であり,これに従った繁華街構成を論じる必要がある. 本研究は「人の感覚」を反映するために認知科学に基づき研究を行い,結果,分類試験により昼夜ともに4本の判断軸と,昼9類,夜8類の潜在的街路イメージ類型を明らかにした.また,この類型を実際の繁華街に用い,エントロピー指標を導入することにより多様性・複雑性の両面からの定量的分析,街路類型の繋がりに着目した定性的分析を行い,繁華街の街路構成を明確にした.